「自ら是とする者は彰かならず」
これは老子の有名な言説の一つですが、
「自分を正しいとする人は自分の正しさが世間に認められない。」
という意味合いの言葉です。
いやぁ実に耳の痛いお言葉。
私たちは生きているとついいつも自分の正しさを主張したくなる生き物ですから(笑)
私は折に触れてこの言葉を見るようにしています。
とりわけ経営者になりたての私はこの罠にどっぷりはまっていました。
「自分が一番経営について深く真摯に考えているし
お客様への姿勢としても明らかに正しい。
なぜ部下はその正しさを理解しないんだ。
絶対に自分の方が正しい、部下のためにもそれを理解させないと…!」
お客様や社員への責任感から真剣にそんな風に思っていました。
でも思えば思うほど、悲しいかな、
その正しさが理解されないのです(笑)
そして私は冒頭の言葉に出会い、ハッとしました。
自分の正しさを主張するばかりでなく
自分の意見が仮に完全に誤ったものだとして
相手の「理」を相手の立場で考えてみることにしたのです。
その時は、ビジネス上「正しい」かどうかは別として
ある世界においてはそれも正しいのかもしれない…ということで
正直「相手が正しい」という結論にはならなかったのですが
ここで魔法のような出来事が!!
私が相手の理や立場を認めて、
相手の思う正しさを理解しようという姿勢を見せただけで
相手はすんなり元々の私の主張を
「社長のいうことは正しいです」と受け入れてくれたのです。
今までの努力はなんだったのかとも思いましたが
老子の言葉のパワーに圧倒されました。
その後も事あるごとにこの言葉を思い出し、
自分の正しさを一度自分で反証することを心がけています。
結果的に
自分の元々の考えが正しいということになるときもあれば
相手の意見も一理あり第三案をということもあるし、
完全に相手側の意見を採用することもありますが、
いずれにせよ、自分が絶対正しいという思い込みを捨てることは
自分をより柔軟で魅力的な人間にしてくれますし、
以前よりもたくさんの意見・情報が自分のもとに集まってきてくれるので
よりよい判断ができるようになる気がしています。
中にはそれほど確固たる意志もなく自分が当然正しいと
思い込んでいるものもあると思いますので
自分の正しさを日々疑う習慣をもつことが
結果的により世間に認められる一番の近道なのかもしれませんね♪
人事コンサルタント
金森秀晃