以前、とある法人管理職の方のコーチングをしていた時のことです。
ふとしたことがきっかけで、10年以上前のマネジメントの”失敗談”に花が咲きました。
かつてその方の部下にAさんという若手スタッフが異動してきたそうです。
前評判としては「慎重すぎて少々融通は利かないところがあるけれど、着実に仕事をこなす」
というものでした。
Aさんは異動してきてから、課題を与えるとコツコツと丁寧に取り組み、きちんとした結果を出していました。
チームの仕事に慣れてもらいたいという思いもあり、新しい製品に切り替えるための販促プランを1か月で考えてもらうことにしたそうです。
結果は・・・
ラスト1週間で期日に全然間に合わないことが発覚。
急遽他のメンバーにも手伝ってもらい、何とか期日にプランを出すのを間に合わせた、というものでした。
「今思えば、部下の手助けをできない、ダメダメ上司の典型例ですが」と前置きをしたうえで
「もしかすると私が考えている以上に、すぐに正しい答えが得られやすい今の若手に、このAさんのような人は多いのかもしれないですね。」とも仰っていました。
仕事にはとことん真面目に取り組むが、途中で不完全なデータや結果があったり、納得できなかったりすると、ガクンとスピードが落ちる。
というより、止まってしまう。
この現象は米スタンフォード大学の名誉教授でもあり、精神科医であるデビッド・D・バーンズが唱えた「認知の歪み」の一つ、「スプリッティング」という態度を持つ人にしばしば見られる傾向になります。
スプリッティングとは、いわゆるグレーゾーンが全くなく、すべてのことを0か100かに二分する指向性のことです。
傾向としては
・すべての準備が完璧にできていたり、自分が理解していないと動けない
・すべてが完璧でなければ失敗だと考えたりする
というのがあります。
Aさんに限らず、このような傾向は多かれ少なかれ私達の中にも潜んでいるように思います。
人間は準備が整わないまま一歩先に踏み出すことに、本能的な恐怖を感じるもの。
私たちの中のAさんが顔を出すのは、たいていの場合、漠然した未知に対する恐怖がある時が多いのかもしれません。
未来に横たわっているかもしれない失敗に対して、不安や恐怖で足がすくんでしまう。
こうなると、冷静であれば見えるはずのものまで見えなくなってしまいますよね。
このような状態に陥ったら、
とどまらせている恐怖の根源をさぐることです。
未来の失敗に対する不安や恐怖の正体が見えてくれば、こっちのものです 笑
正体が分かれば、多少なりとも冷静さを取り戻すことができます。
同時に、どんな手を打てばよいかも見えてくると思います。
根源を探るのは、自己対話でやっても良いですし
誰かに質問をしてもらうことで、掘り下げても良いと思います。
みなさんの周りで、もしAさんのような方がいたら、
または自分がAさんのように陥ってしまうことがあったら、ぜひやってみてくださいね^^
あなたの身を守るだけでなく、可能性のある部下の成長を促すことができると思います。
人事コンサルタント
金森 秀晃