野村證券の営業マン時代の僕は
優秀すぎる先輩・上司、頭良すぎる同期の中で、
自分はこれだけ何もできないのだから、ひたすら貪欲に学ぶしかないと思い、
毎朝始発で会社に行って、寮に帰ってからも勉強に明け暮れていました。
絶対に受注したい、絶対にトップセールスになってやる！
そんな思いで、
「どうしたらお客様に信頼していただけるか」
「どうしたら、こいつと付き合うと得だと思って頂けるか」
「どのように振る舞えば自分のことを応援したいと思って頂けるか」
「どうしたらしつこいと思われずに接触回数を増やせるか」
「どうしたら金森くんに会いたいと思って頂けるか」
などなど、毎日毎日必死に考え、お客様にアプローチしていました。
（驚くべきほどにうまくいかない策も多々ありましたが…笑）
そんなとき、どうしても契約を頂きたい一人のお客様を巡り会いました。
その方のお考えに触れ、本気で仕事を通じてその方の考えを学びたいと思わせていただいたからです。
ただ、そういった方から信頼を獲得することは簡単ではありません。
そのお客様ともっともっと接点が欲しくて（お伺いする理由が欲しくて）
普通にFAXすれば済む資料を、封書にして実際にお持ちしてみたり、
会社やご自宅の前で出待ちをさせていただいたり…
そんな執念をもって挑んでいました。笑
そんなことをしているうちに、徐々にそのお客様も気を許してくださるようになり、
ついに「どんな商品があるの？今度もってきてよ」
というお言葉をいただき、プレゼン、
そして、契約書をもってきてくださいという口頭OKを頂くまでにこぎつけることができました。
嬉しくて嬉しくて翌日、意気揚々とお宅にお伺いして、
契約書を広げると…
その時、お客様から信じられないお言葉が…！
「金森くん…、この話はなしだ。
今日はもう帰ってくれ。」
「え…、あの…」と動揺を隠せずにいると…
「大事な資産を預けるんだ。
残念だけど家にあがるとき、
靴も揃えられないような人間を信用できないよ」
そうです。
当時の僕は、初めての高額案件に舞い上がってしまって、
脱いだ靴を揃えることもなく、ご自宅にあがってしまったのです。
大変迂闊でした。。。大反省です。
反省はしたのですが、当時、
「たったそれだけのことで、契約撤回までしなくても…」
と頭をよぎったことも告白しなければなりません。
しかし、今にして思えばですが、
ここで、もしこのお客様が、
「今後のために靴を揃えた方がいいよ」
と言ってくださったとしたら、
きっと当時の僕ではその大事な忠告を、ちょっとした小言くらいにしか
捉えなかったことでしょう。
契約をしないという、確固たる結果を突きつけてくださったからこそ、
「他人の資産を預かるということはこういうことだ」
「これは社会人としてありないことなのだ」
「信頼にたる人間はこうした礼節に気を配れる品格のある人間なのだ」
こんな風に猛省し、その後の社会人生活に大きな影響をもたらす重大な出来事になったのだと思います。
現在進行系ではありますが、思えば、僕はこうしたお客様の愛情に支えられて、
一人の社会人として、一端の経営者としてやらせていただけるようになったのだと感じています。
そう思うと、本当に一つひとつの出逢いを、一瞬たりとも無駄に出来ないし、
そこから何を学べるかを必死に考えたくなります。
日々精進、日々感謝ですね。
人事コンサルタント
金森秀晃
