「評価制度の導入を検討しているので、従業員に話をしてみたところ、
給与に連動していくならば、上司を評価できるようにして欲しいと言われてしまって。
好き嫌いで裁かれて不当に扱われるのが嫌だからということのようでした。
やはり上司も評価するような360度評価のようなものも入れたほうがいいんでしょうか。」
これは先日評価制度の導入を検討されている事務長からご相談を受けた内容なのですが、
こちらに関しては明確に「No!」と申し上げておきたいと思います。
以前にも少し解説したことがあるのですが、
一番大きな理由は、部下が上司を評価する構図を作ると、
逆に上司は部下をフェアに評価することができなくなるからです。
上司も人間ですから、
「この子に厳しい評価をつけたら、
報復で自分の評価を悪くしてくるんじゃないか…」
という懸念が可能性もありますよね。
また、こういう事態も想定されます。
本当に全然仕事ができていないのに、
「自分はできているのに、上司がそれを正当に評価していない。
認めてくれないから、上司が無能だ!」
という主張を構造上許すということになってしまいます。
これでは、自分が経営者だったら
まともな評価として評点をそのまま受け入れることは
なかなか難しいと思いませんか?
ただ、「好き嫌いで評価されたくない」という職員の方の気持ちはよくわかります。
見せ方がうまいけど全然仕事をしていない人が評価される、というのも嫌ですよね。
だから上司の評価能力も評価を!ということかとは思うのですがご安心ください。
それ以外にもやりようはいくらでもあります。
・各段階に求める役割レベルを明確に定義する(等級制度)。
・期初の合意形成が取れる仕組み(期末にはしごを外されないように基準を期初に確認する)
・人事評価の能力については、部下ではなくその人の上長が評価する
これだけでも、冒頭の職員の方の懸念は8割方クリアされるでしょう。
いずれにせよ部下が上司を評価する仕組みというのは組織論的には破綻していまして、
(部下は上司の仕事を100%知っているわけでもなければ、
上司としてあるべき姿が、今の部下にとって心地よいとは限らないからです)
ガバナンスが崩壊して、人工的モンスター社員を量産するような状況を生みかねないので、
もしこうした事を考えている法人様がいらっしゃれば是非一度ご相談ください。
人事コンサルタント
金森秀晃