先日、とある介護施設の次世代リーダー層を対象とした研修をしていた時の事です。
主任になったばかりのAさんは、自分の作業時間を割いて丁寧に説明しても
何かと理由をつけてやらない一部のスタッフに頭を悩ませていました。
直属の上司に相談しても
「仕方ないよ、そもそもやる気がないんだから」と、
諦めモード全開だったのだそうです。
”わかってくれる人が誰もいない・・・”
そう感じるようになったAさんは次第に
”割り切って仕事した方がラクなのかな・・・”と思い始めていました。
そんな矢先、直属の上司が異動し新しい上司になりました。
赴任初日の開口一番、新しい上司はAさんに面と向かってこんな言葉をかけたそうです。
「私はあなたに期待してないからね。」
Aさんは戸惑いました。
自分の人となりや仕事ぶりを知っていたらそう言われるのもまだわかるけど、
まともに会話をしたことすらないのに、判断ができるはずがないと思ったからでした。
「ただ、新しい上司と一緒に働くうちに、少しずつですが言葉の真意が分かってきたんです。」とAさん。
その真意とは“見返りを期待せずに、いずれ出来ることを信じる“ということです。
このことをAさんは「相手は自分が求めるように通じないかもしれないとかすぐできないかもしれないということも内包しながら、
少しずつ通じ、変化していくことを信じるということなんじゃないかなと思っています。」と話してくれました。
私たちが相手に憤ったりガッカリする時を思い返してみると
無意識下で相手に
「普通こうでしょ」
「ここまでしたんだから、こうしてくれるはずだ」などと
自分の価値観や都合の良い解釈からくる期待をしている時が多いかもしれませんね(´Д`)
Aさんは、この状態に陥り
事実を正確に捉えることができなくなって、
使うべき所に労力を傾けられてなかったと振り返っていました。
「私はスタッフのことを尊重してるつもりだったのかもしれません。
相手が思い通りにならないことに憤るのではなく、得られた事実を受け入れて、自分が変わるべきだったんだなと思いました。
上司はそれを見抜き、事実を捉えさせ業務に支障が出ないようにあの言葉をかけてくれたんだと思います。」
晴れ晴れとした表情でAさんは話してくれました。
”期待せずに信じる”という意識を持つことは
”他人に責任を押し付けるのではなく、自分が責任を負う”
という覚悟と優しさの表れなのかもしれません。
いつも完璧に!という訳にはいかないかもしれませんが、
常に人としてそのような矜持を持って行動していきたいものですね!
人事コンサルタント
金森秀晃