野村證券時代、生え抜きで実験的に本社配属された私ですが、
野村證券の本社といえば、各支店でトップクラスの成績を収めた猛者たちが集う場所。
当然、本社では証券用語、略語、為替などの様々な情報がそれこそ嵐のように飛び交い、
3倍速ですか?というレベルの上司、先輩方の言葉を聞きながら、
淀みなく、スマートに話をすることが、トップセールスマンの証なのだ!と思って、
私は、毎日淀みなく話す訓練を重ねておりました。
とにかく、かっこよく、うまく話して圧倒してやろう!そんなマインドだったと思います。
しかし、ある日を境に、 そのイメージは180度変わることになります。
「金森、名刺を持ってついてこい」
そう言われて上司に同行させていただいた際のことです。
というのも、いつも常人の3倍速以上の速度でスマートに話す上司は、
客先において…
「え?まじかよ?!なんかの冗談なの!?」
というほどに、スマートさのかけらもなく、
むしろ訥弁(つかえつかえしゃべる話し方)と思える話し方だったのです。
(社内での3倍速の話はどこへやら…笑)
若造だった私にとっては、
決して、カッコイイ、いわゆる「イケてる」上司のイメージではありませんでしたが(笑)、
お客様のペースで、目線を合わせ、一つひとつ誠実に着実に確認を取りながら話を勧める上司と
その上司に身を委ねて安心しきって話をなさっているお客様との空間で、私は気付かされました。
「流暢に話すことが目的ではない、相手のペースで相手に届くように
急がず、準備をして、自分の声、言葉で話すことの方が重要なのだ」と。
また、その同行のあと、上司は私に教えてくれました。
「びっくりしたでしょう。
話し方も手段です。目的に合わせて使い分けられるといいですね。
それに、仮に失敗したとしても気にすることはないよ。
自分以外、その失敗のことなんて覚えていないし、
一生懸命な姿勢を悪く思う人なんてそうそういないからね。」
その言葉は、今でもプレゼンテーションの場や講師として登壇させて頂く際の私の指針になっています。
「うまく」より「自分の声、言葉で」。
スマートさやカッコよさはそうしたことを徹底なさっている方々から自然と滲み出るものなのでしょうね。
私も改めて、追求していきたい指針の一つです。
人事コンサルタント
金森秀晃