「生命体は、自らを“壊す”ことで進化する。」
これは生物学者・福岡伸一さんが語る「動的平衡」という概念です。
人の体は、私たちが驚くレベルで細胞が日々入れ替わりながらも(脳細胞さえも入れ替わる)、
全体としての“私”を保ってくれています。
この考え方自体は、個としての生物を捉えた時の概念ではありますが、
これは病院という「組織」にも通ずるところがありますよね。
医療の現場では、いわずもがな人も制度も科学も環境も絶えず変化しています。
現に20年続いている病院があるとしたら
オリジナルメンバーは全体の1/10もいないことも多いのではないでしょうか。
それでも「○○病院」としての存在を維持し続けているということは、
変化を受け入れながら全体のバランスを保つこと=動的平衡がある程度存在していたということになります。
ですが、医療業界に関して言えば、その動的平衡は
「医療的ケア」つまり診療上の指揮命令系統の部分のみに適用されてきたとも言えると思います。
(そうでないと”ヤブ医者”状態になりすでに淘汰されていると思うからです。)
診療上の指揮命令系統という面では、新しい医療界の常識を取り込んで変化してきたものの
こと経営面や組織上の指揮命令系統の部分においては、それらが適用されず取り残された化石のようになっている組織も珍しくありません。
その結果、変化の激しい昨今の医療業界において、淘汰される対象になりつつある
という危機に直面しているところも少なくないと思います。
ではどうすれば、組織全体で「動的平衡」状態を作っていくことができるのか。
それは、ひとえに「ガバナンス構築」といえるでしょう。
ガバナンスとは、組織をしなやかに機能させ続けるための“骨組み”のようなものです。
意思決定が一部に偏っていないか、現場の声が経営に届いているか。
暴走せず、健全に進化していくための羅針盤のようなものと考えるといいと思います。
またそれらを属人化せず、人が変わっても一定の質を保てる仕組みを持つことも大切です。
「この人がいないと回らない」組織は危ういもので、
古くなった細胞を壊し、新しい細胞に置き換える体の働きと似ていますよね。
そのガバナンスの象徴が何かといえば・・・
しっかり機能する「人事評価制度」!であると言えるでしょう。
組織が変わろうと思ったときには
・職員にこういう行動を取ってもらう必要がある
・こういう認識をもってもらう必要がある
・こういう人材を高く評価していきたい
という物差しがどうしても変わっていくものです。
今まで通りの基準で評価をされて、これまでと違う行動をとってくださいというのも普通に考えて無理がありますし、
しっかりと新しい基準を示すことで、職員側も疑問やコンフリクトを表明できるようになります。
表明してくれさえすればあとは話し合って合意形成するなり、制度を修正するなりするだけです。
どうしても合意形成できないところがあれば、そこは組織として新陳代謝をしていく他ありません。
とりわけ今の医療の現場は、人口構造の急激な変化、働き方改革による人手不足問題、
物価上昇や賃金上昇に見合わない診療報酬制度問題など、激しく揺れています。
そういう意味ではそこに取り組む「最大にして最後のチャンス」と言えるかもしれません。
これを機に新陳代謝を始めたい・・・!という方がいらっしゃれば、ぜひお気軽にご相談ください。
人事コンサルタント
金森秀晃