「病院の危機意識を共有したいが、いまいち伝わらない。
逆に私たちの頑張りが足りないと言いたいのか?と反発されてしまった。
そういうことではないのだが、どうしたら伝わるのだろうか。」
これは先日、病院経営をされている院長先生から頂いたご相談です。
実は最近、これに近しい質問を多数いただいていたので、
今日はその点について少しお話してみたいと思います。
この質問について「実際、どのように皆さんには伝えてみたのですか?」と聞いたところ
院長先生はこのようなイメージで伝えたそうです。
(特定の病院の例を書くわけにはいかないので
色々な病院の例をかけあわせてよくある例として載せますね。)
・現状このまま進むと数千万単位の赤字になる
・今あけられていない病床をあけていく必要がある
・そのためには看護師の協力が必要だ
・看護部でどうすればベッドをあけることができるか危機感をもって真剣に考えて欲しい
これを受けて、看護部から
「私たちの頑張りが足りないってことですか?!」
と猛反発の声があがったということです。
しまいには「うちの病院経営やばそうだから、転職しようかな」という人も現れ、
この危機意識の共有がマイナスな方向にしかいっておらず頭を抱えているということでした。
文章にするともう言わずもがなというところではあるのですが、
まずこの伝え方では看護部をピンポイントで狙って悪者にしている
と捉えられてもおかしくないですよね。
実際に現場にヒアリングをかけてみると
看護部としてもそもそも看護部は受け入れ体制できているのに
医師が定時付近になると入院面倒だから返してしまったりするので
いつまでも稼働率があがらないのではないか等の不満があったりするわけです。
それなのに看護部のせいのように全職員に言われて…と腹がたっているということでした。
(ごもっともです)
そしてもっというと、ソーシャルワーカーの方々いわく
看護部というより先生が入院を面倒くさがっているので
受け入れの相談などをするにもかなり気を使っていて
それが稼働率の低下に拍車をかけていると思います、というではありませんか。
これでは結果的に、頑張っている人に経営ヤバイからもっと走れといい、
実際ボトルネックになっている人には何も言っていなかったということになります。
これではせっかく危機意識を共有して改善策を示したところで
逆効果になってしまいますよね。
だからといって危機意識を共有しないというのも違いますので、
効果的な危機意識の伝え方の3原則を共有したいと思います。
ぜひ参考になさってみてください。
①問題の根源把握は徹底的に!
解決策の前に、問題の根源の把握はしっかりと行い
解決策の方向性を間違えないことが重要です。
ここを疎かにして数字だけでそこから見える解決の方向性を示すのみになって
しまっている組織が多いように思います。
数字だけでなく、実際の職員の声にも耳を傾けることが大切です。
②解決に向けた具体的行動も示せる準備を!
黒字化に向けて何をすればよいのか具体的に示すこと、
その結果どういう未来が待っているかの希望もしっかり提示することが重要です。
やみくもにこの数字を獲得するために頑張ってくれ、考えてくれ!
というやり方では職員もただ戸惑うだけになってしまいます。
③意見を聞かせてというスタンスで!
「こういう目標を決めてこういう行動をしてください」だけでは
正直、職員の意識を変えることには繋がりにくいと思います。
「私たちはこう考えているけれど、実際どうしたらいいか皆さんの知恵を借りたい。
利益が出た分をきちんとみなさんに還元したいから」という
経営側のメッセージがないと職員としてもなかなか協力しにくいというのが実情でしょう。
この意見を取り交わす過程で職員の意識が形成されていくのです。
病院の経営がやばいこと、わかってくれよ!
というだけだともったいないので、ぜひこの3原則を踏まえて危機意識を共有し、
一致団結して経営課題に取り組めるようなチームを作っていきましょう。
少しでも参考になれば幸いです。
人事コンサルタント
金森秀晃