・25人が犠牲になった大阪市北区曽根崎新地のクリニック放火殺人事件
・地域医療の要とも言われる志高い医師が犠牲になったふじみ野市立てこもり事件
いずれもあまりにも痛ましく凄惨で、気が滅入るような事件でした。
被害にあわれた方のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
これは事件であり事故ではありませんが
ハインリッヒの法則(1件の重大事故の裏には29件の軽微な事故と300件の怪我に至らない事故がある)のように
このような重大事件の裏で各医療機関は多くの火種を抱えていらっしゃると思います。
犯人のあまりに身勝手な考えや悪意を前に完全に事件を防ぐということは
難しいことではありますが、医療は社会のインフラのような存在でもあり、
インフラを支えてくださる方々を守るための最低限の策は各医療機関も十分に講じておくべきでしょう。
(行政もそれを推進・支援し、対策を講じるべきだと思います)
そこで今回は、リスクマネジメントの観点から、
医療機関が今すぐ取るべき防衛策ということで、
最も重要な3つに絞って共有させていただきたいと思います。
1)普段から院内でクレーマー対応について話し合う
これは当たり前のようですが「徹底」しているところはまだまだ少ないように思います。
ですが、ここでの最大のポイントは「徹底」するところにあります。
クレーマー対応もある意味、訓練・練習するべき「技術」だからです。
クレーマーにも色々と種類はありますが、
ある程度パターンは決まっており当然ですがそれぞれに最適解はあります。
その最適解について知識としてご存じの方は多いと思うのですが
(最適解がわからない場合は早急に確認しましょう)
それをすぐさま実行できるかどうかはまた別問題です。
共有やシミュレーション、訓練が甘いと
その時のクレーマーの勢いに負けてしまったり、
反射的に(恐怖や焦りなどで)鉄則から逸脱してしまったりすることもあるでしょう。
BCPや感染対策等でも普段から対応について話し合い
平時から共有していくことの重要性と意味については、
医療機関の方であれば十分にご理解いただけることと思います。
2)悪質なクレーマー対応の専任者(用心棒のような存在)を雇う
「ここまでする必要があるか」、「うちにそんな余裕はない」
というお気持ちがあるのはごもっともなのですが、
専任担当者の有無で(悪質なクレーマー対応の負担が減るだけで)
善良で心ある職員の疲弊、離職問題は大きく軽減されます。
そもそも、医療従事者は診療や看護、医事などにおけるプロであり、
クレーマー対応のプロではないわけですから、
専門外の仕事にエネルギーを奪われるのは非常にもったいないことでもあります。
また善良で優しい方ほど悪質なクレーマーの方の要求をのみすぎてしまったり
使命感から見捨てることができなかったりして
負担を強いられてしまう現状もあるのではないでしょうか。
必ずしも常駐する必要はありませんが、いざという時に
前線で対応してくれる専門家・専任者の存在がいるだけで、
職員に何にも代えがたい安心感をもたらすことができます。
需要過多でもあるのですぐにご案内が難しいこともあるのですが、
人材供給のご相談も承っておりますので、
もし必要があればこちらからお問合せください。
(お問合せ窓口: https://f-zac.com/contact.html )
3)モンスターペイシェント対応に強い顧問弁護士を雇う
専任担当者までは雇えないというところであっても
最低限、こうした問題が起こった際に
プロとして毅然と対応してくれる法の専門家は雇うべきです。
その存在をにおわせるだけで手を引くクレーマーもいることでしょう。
ただ、注意すべき点があります。
弁護士の先生も専門領域は様々ですから、モンスターペイシェント、
クレーマー対応に長けた先生を選ぶべきということです。
(当然ですが、医療過誤の訴訟には強いけれど、
クレーマー対応等には特段強くないという先生もいらっしゃいます。)
もうひとつ、欲を言えば労使間紛争に強いことも重視するとよいでしょう。
世の中には、いわゆるモンスター社員と呼ばれる、
仕事はしないが権利だけは主張するという方々もいるものです。
そうなると真面目で善良な職員が負担を強いられることになります。
(仕組みを整えない限り、代償を支払うのはいつも善良な職員です)
医療機関へのコンサルティングをさせていただく中で、
こうした問題に強い弁護士の先生方にたくさん出会ってきたこともあり、
弁護士のご紹介についても無償でさせていただいておりますので、
ご興味があればこちらからお問合せください。
(お問合せ窓口:https://f-zac.com/contact.html )
痛ましい事件の裏側で、日々多くの医療従事者の方々が
モンスターペイシェント、クレーマーの脅威にさらされているかと思うと、
非常に胸が痛みます。
新型コロナウイルス関連の反ワクチン運動・半マスク運動などで
医師に向けた殺害予告、誹謗中傷が繰り返されるケースも散見しますが、
このような対策を広め支援していくことで、微力ながら、
安全に診療が行えるようサポートしていきたいと思います。
人事コンサルタント
金森秀晃