「自分には才能がないから、努力するしかないと思い、ここまでやってきた」
歌舞伎俳優で人間国宝の二代目中村吉右衛門(きちえもん)さん が語った言葉です。
先日、家でたまたまテレビを点けた時のこと。
中村さんに取材した番組が放映されていました。
中村吉右衛門さんは、現在75歳。
実父が初代松本白鸚(はくおう)さん、祖父が初代中村吉右衛門さんで、兄が九代目松本幸四郎(こうしろう)さんという、歌舞伎俳優一家に生まれました。
いわば、生まれながらに歌舞伎俳優になる運命を背負っていたわけです。
ご本人もこのことについて、若い頃は思い悩んだ時期があったようです。
人間国宝となられた現在でも、日々の稽古を欠かさず、4歳で初舞台を踏んでから、すでに70年以上が経ちます。
会社員が定年(60歳)まで働いたとしたら約40年。
その倍近くもずっと歌舞伎を続けていると考えると、私たちの感覚だと、とっくに“飽きた”レベルを通り越しているように想像が膨らみます。
しかし、中村さんのお話の端々には「学ぶ」という言葉が繰り返し出てきていました。
今でも勉強の毎日だというのです。
ご本人はおそらく、自分が人間国宝になるなど、考えてもいなかったのではないかと思います。
「センスを磨くにはどうしたらいいのか?それは、人間的成長しかない」
この言葉どおり、中村さんはご自身の技とセンスを磨きたい一心で、ご自身の未熟さと対峙し続け、人知れず稽古を常人には及びもつかない期間続けてきたからこそ、結果として得たものなのだと思います。
人間的成長、シンプルですがこの言葉に中村さんのこれまで歩まれてきた重みを感じずにはいられませんでした。
いろいろなハウツーがあふれている現代、
気を付けていないと思考が散在してしまいがちになります。
学び・人間的成長をするということは、
自分がいかに未熟であるかをしっかりと把握し、
練習をし続けること。
やるべきことはそれだけでよいのだと中村さんから学び、
勇気をいただきました!
人事コンサルタント
金森 秀晃