長野県阿智村に「日本一の星空ナイトツアー」というのがあります。
この村は長野県南部にある人口6600人の村です。
2011年までは廃れた温泉郷で、村に20軒ある温泉旅館同士は値下げ競争と、低稼働率に悩んでいました。
そこで少数の若手が中心になり「日本一の星空ナイトツアー」を始め、2016年には11万人もの観光客を集めました。
旅館も値下げせずに稼働率が大きく上がり、村全体が活気づいているそうです。
今日はこの事例から、組織活性の3ステップをまとめてみましたのでご紹介したいと思います。
ステップは3つです。
①危機意識をもつ
「あるべき姿」を考え、「現状」とのギャップを把握し、「解決すべき問題」=「コレやりたい!」を決めます。
阿智村のとある温泉旅館の企画課長は「このまま縮小が続いたら、子どもたちに阿智村を渡せなくなる」という危機感を持っていました。
「あるべき姿」は「将来も繁栄する阿智村」でしたが、「現状」は「衰退の一途」、そこで「解決すべき課題」は「阿智村の地域づくり」だったのです。
②チームづくり
同じ問題意識を持つ仲間とプロジェクトチームを作る。
危機感を抱き、解決策を模索し始めると様々なアンテナが立ち始めます。
あるセミナーで出会ったのが、JTB中部の竹田さんという方だったそうです。
2人は意気投合し、「阿智村の地域づくりをしよう」と話し合いを開始。
色々と調べていると環境省が阿智村の星空を「日本一の星空」として認定していたことも分かりました。
そしてスキー場の社長、温泉郷のご意見番的な旅館の社長など、信頼できる仲間も加わり、「日本一の星空ナイトツアー」への挑戦が始まりました。
③仮説&検証
仮説検証の本質は「失敗からの学び」。
80点主義で大まかな仮説を作ったら、即実行、即検証、即対応。
この繰り返しで、事実からの学びを積み重ね、スピーディーに成長します。
本当にお客さんが満天の星で感動するかを確かめるために、早い段階で小学生を招いてツアーを行いました。
また、星の物語を話す「スターガイド」を採用、育成してパイロットツアーで挑戦させる、
取り組みを公式なものにするために観光関係者を招いて協議会を開催する、
など、様々なテストを行ったそうです。
しかし、ここに行きつくまですべてが順調だったわけではありません。
協議会の参加者はたった3人。
初日の来場客もたった3人。
しかし星を見たお客さんは心から感動していました。
そして素早い仮説検証を愚直に繰り返し、わずか5年で11万人が集まるまでに育てあげたのだそうです。
仕事をする理由は様々あって良いと思います。
ただ、私達の人生の多くを占めることなのに
「上司に言われたから」
「会社の方針だから」
「だって仕事だから」
だけでは、少々味気ないような感じもしますよね。
本来仕事とは、仲間とともに「コレやりたい!」という思いを共有し、その実現を通じてお客さまを幸せにし、自分自身も感動するもののように思います。
組織を「成長パターン」に変えるのは、現場でお客さまの課題と向き合う全てのスタッフです。
あなたが仕事で「コレやりたい!」を目指して挑戦するようになれば、周りの環境が徐々に変化していることがつぶさに感じられるようになるかもしれません。
人事コンサルタント
金森 秀晃